『第563話』 【尿路結石】夏に倍増、注意が必要

漫画の主人公ポパイは尿路結石症だったか? 漫画では側腹部に激痛が走る疝痛(せんつう)やおしっこをした時に痛むシーンは出てこない。

ホウレンソウなどに含まれるシュウ酸を多く摂取すると、尿路結石ができやすくなる。ホウレンソウのようにシュウ酸を多く含む食品は多く、毎日飲む緑茶や紅茶、タケノコ、枝豆などがある。また、ペットボトルのお茶類にもシュウ酸が相当量含まれている。しかし、ポパイは茹(ゆ)でられた缶詰のホウレンソウを食べていた。茹でるとホウレンソウに含まれるシュウ酸は半分程度になる。ポパイは結石の予防対策をしっかり取っていたようだ。

シュウ酸は消化管の中でカルシウムと結合し、カルシウムの吸収を阻害する。しかし、摂取した食品中のカルシウムが不足していると結合できなくなり、体が余ったシュウ酸を吸収してしまう。このシュウ酸が腎(じん)臓から排せつされると、尿中のカルシウムと結合してシュウ酸カルシウムとなって結石を作る。長期にわたってビタミンCを服用しても尿中シュウ酸量が増える。また、過度の動物性タンパクの摂取は尿中のカルシウム量を増加させる。

シュウ酸とカルシウムは1対1で反応する。尿中カルシウム量に対して、尿中シュウ酸量はその10~20分の1しかなく、結石ができる量は尿中のシュウ酸量で決まると考えられる。従って、食事後に牛乳を1杯飲むことは結石予防につながる。

尿路結石は、シュウ酸カルシウム結石とリン酸カルシウム結石で約8割を占める。リン酸カルシウムはカルシウム不足の健康補助食品の成分として含むものがあり、結石がある人は摂取してはいけない。

夏は汗をかきやすいため、通常1~1.5リットルある尿量が半分程度まで少なくなる。汗からはシュウ酸が排せつされることはないので、尿中のシュウ酸は2倍に濃縮されることになる。このため、夏にかけて尿路結石患者が倍増する。シスチン結石や尿酸結石以外の結石を溶かす薬はない。従って、一度できてしまった結石は、超音波で粉砕して取り除くことになる。

1日2リットル以上の水分を摂取することは、結石の予防になる。また、茹でたホウレンソウにカルシウムを含むかつお節をのせるのは、理にかなった料理方法だ。