『第760話』 【新型インフルエンザ】性質、予防法の周知重要

「今冬は異常だ。昨年度の大雪は何だったんだ」。最近はこのように言葉を交わすことがあいさつ代わりになっているが、雪が少ないのも多いのも人間の産業活動により大量の炭酸ガスが放出されていることが関係しているのを考えてもらいたい。

極端に少ない降雪とともに気になっているのが、インフルエンザの発症者が少ないこと。気象と疾病は因果関係が深く、主に冬は呼吸器系感染症や脳卒中、春は花粉症、夏になれば食中毒や脱水症、秋は日照時間との関連性が考えられているうつ病が増える傾向が見られる。

乾燥した冷たい空気は上気道粘膜の抵抗力を弱め、各種のウイルスや細菌による感染を起こしやすくする。しかし春先のような気候が続けば、抵抗力が下がらないため感染しにくくなる。インフルエンザが流行していない理由として証拠はないが、仮説としては成り立つだろう。

インフルエンザウイルスにはA、B、C型がある。オセルタミビル(商品名タミフル)とザナミビル(同リレンザ)はA型とB型、アマンタジン(同シンメトレル)はA型に効果がある。こうした抗インフルエンザウイルス薬が新型インフルエンザにも確実に効果を発揮するのかは、使ってみないと分からないところがある。

H5N1型の高病原性鳥インフルエンザが、人間に容易に感染するように変異するまで秒読み段階といわれる。WHO(世界保健機関)の発表では2003年以降、東南アジアを中心に267人が罹患(りかん)して161人が死亡している。

厚生労働省は05年に「新型インフルエンザ対策行動計画」を作成、対策の実施が進められている。米国では初期の封じ込めよりも交通網を遮断して感染の拡大を防ぐと同時に、抗インフルエンザ薬による治療を行い社会的影響を最小限にとどめようと考えているようだ。同様の方法を用い、小さな島国の日本で空気感染するインフルエンザウイルスを封じ込めるのは難しいだろう。病院に向かうまでに感染者自身が感染源となり、ウイルスをまき散らすことになる。むしろ在宅で診断し、薬は薬剤師が届ける方が懸命だ。

新型インフルエンザがいったん発生すれば、季節は関係ない。県民にその性質、自分自身が感染源になり得ること、感染経路、予防法、治療法を知ってもらい、実行してもらうことが重要になる。