『第761話』 【健康管理】自覚症状無くても注意

めまいがあるとはいえ、日常生活で特に困ることはなかった。最近は降圧剤の効果が十分に得られ、血圧も安定していた。父は「血圧が下がったため、めまいがしたと思っていた」と言っていた。

薬が効きすぎ、一過性の起立性低血圧か脳虚血状態になったことによるめまいということで済ましてしまいそうな話だったが副作用かもしれず、その確認のため、かかりつけ医を受診した。

受診後、すぐに入院させるように医師から連絡があった。脈拍が毎分30回しかなく、24時間心電図(ホルター心電図)の結果では朝方に6秒程度の心停止状態が数回あるとのこと。10秒停止したら突然死だという。よくよく父に話を聞くと、散歩から戻り下を向いて愛犬の足を洗っている時に頭の中が真っ白になってよろめき、その間の記憶がないという重いめまいだったようだ。

痛い、かゆいという症状があれば病気だと気付くが、徐脈は自覚しないものかと薬剤師の妻と顔を見合わせた。文献には症状がゆっくり進行すると気が付かないことがあると書かれていた。

入院直後、脈を取ると毎分50回。やはり明らかな徐脈で洞不全症候群と診断された。洞房結節から出て、心拍の調子を整える電気刺激が弱くなっている病態だ。車などを運転しているときにめまいを起こすと大事故を起こしかねない。

血流障害や老化などが原因とされるが、喫煙も一つの要因になる。もともと自覚症状がない不顕性洞不全症候群があって「降圧剤や交感神経遮断薬などを服用したために顕在化してくることもある。

治療薬はなく、ペースメーカーを埋め込んだ。本体価格約180万円、リード(電極)約20万円、そのほかを含めると総額250万円以上かかるが、高額医療費の対象となるのでありがたい。皆保険制度の日本は裕福でない人でも高度な医療を受けられる。父の調子も良いようだ。

年を取っても元気でいるのに越したことはない。最近は活発に体を動かしたり、趣味を楽しむ高齢者もよく見かける。ただ、はっきりした自覚症状がないまま進行する病気もある。やはり年に1回は忘れずに健康診断を受け、自分自身の体をチェックしてほしい。また、めまいなどがあるようなら受診して、それが薬の副作用なのか、それともほかに原因があるのかといったことを確認した方がよい。