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百薬一話

『第252話』 皮膚からも吸収、付いたら水洗い

1996-07-14   

 青森県五所川原市で、消毒剤として汎用(はんよう)されているクレゾールせっけんによる事故が発生した。
 1865年、英国人リスターが外科手術に石炭タールを蒸留して得られた石炭酸(フェノール)を応用して、術後感染症を大幅に減少させることに成功した。その後、より毒性の少ないフェノール類似物質クレゾールが分離されて使用されるようになった。
 クレゾールは水に溶けにくいので、同量のせっけんを混ぜてクレゾールせっけんの原液を作る。手指を消毒する場合は2%水溶液を使う。また、有機物があっても消毒効果があまり減らないことから、伝染病患者の汚物を消毒する際に5〜10%溶液が使われる。クレゾールには独特の臭気があって、病院特有のにおいはクレゾールせっけんによるものだ。
 特にフェノールやクレゾールは結核菌を効率良く殺菌するので、結核患者が多かった日本では、トイレや喀痰(かくたん)の消毒、ウジを殺す防疫用殺虫剤などに多用され、現在でも病院・診療所で常用されている。
 フェノールやクレゾールは、服用しなくても皮膚から速やかに吸収される。皮膚を腐食させる作用が強く、原液を付けると皮膚タンパクが変性して白く変色する。やがて化学熱傷によって発赤、びらん状態になる。急性中毒では尿毒症症状、意識喪失、循環器障害を起こして死亡することもある。
 今回の事故のようにズボンに付着したときは、長時間接触することによって吸収量が多くなってしまう。さらに臀部(でんぶ)は皮膚が薄いため、より吸収されやすく事態を悪化させる。衣類に付着した場合は脱ぎ捨てて、皮膚を水洗いする必要がある。誤飲の場合は胃洗浄や症状に応じた治療が行われる。吸収されたクレゾールは24時間以内に大部分が尿から排せつされるので十分な輸液を行って利尿させることが重要だ。
 汎用する薬品だからといって安易に考えてはいけない。誤った使い方や保存方法によって事故はいつでも起こり得る。


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