百薬一話

『第85話』 微量の医薬品を正確に量る倍散

1993-01-24   

 医薬品にはグラムの単位で用いる薬から、麻薬や毒薬のようにミリグラムあるいはマイクログラムの単位で用いるものまである。1ミリグラムは1グラムの1,000分の1、そのまた1,000分の1が1マイクログラムだ。現在は普通の机の上でも使えるマイクログラム単位の天びんが製品化されているが、小型車ほどの値段だ。
 しかし、10年ほど前のこうした天びんは特別な部屋を必要とした。温度や湿度の変化、少しの風でも目盛りが動くほど不安定だったからだ。また、基礎のしっかりしていない建物や2階では揺れのため量れず、地面にコンクリート柱を打ち、その上に直接載せて使っていた。
 実際の調剤業務で散剤(粉末の薬)を量るには、10ミリグラムまで量れるデジタル式の電子天びんが一般的に使われている。ただ、これでは10ミリグラムより軽いものは量れないし、100ミリグラム以下の重さは不正確になってしまう。
 そこで、倍散というものを使う。これは原薬に乳糖やでんぷんといった賦形剤を加えて量を多くしたものだ。薬によって違うが10倍散、100倍散、1,000倍散、10,000倍散が用意され、正確に量れるようになっている。
 倍散を調製するときは色をつける。均等に混合できたか確認するためだ。毒薬は青、劇薬は赤に着色するが、原薬に色が付いている場合は着色しない。
 倍散を使う理由がもう一つある。10ミリグラムの散剤の量は、小指に少量の塩をつけた程度の量だ。これでは少なすぎて服用しにくいが、100倍散を使うとちょうど1グラムとなり、大人が1回に服用する量にちょうど良くなる。子供の場合はO.5グラム程度が良いとされている。


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