『第147話』 たばこを吸うと薬の効果は半減
たばこに含まれるニコチンは猛毒で18世紀ごろから殺虫剤として使われてきた。ニコチンが体内に入ると白血球に作用して炎症を起こしたり、肺を損傷させることが分かっている。その致死量は成人で10ミリグラムだ。これはたばこ10本分に相当する。その煙にはニコチンのほか、一酸化炭素や発がん物質のベンツピレンなどさまざまな有害物質が含まれていて、周囲の人に与える迷惑は社会問題となっている。
一般にたばこを吸うと薬が効きにくくなる。煙に含まれる各成分が肝臓の薬物代謝酵素を活性化して薬の代謝を早めてしまうからだ。特にぜんそくや気管支炎に使われる気管支拡張剤のテオフィリンや糖尿病薬のインスリンの効果は半減する。このため、1日20本以上吸う人にはあらかじめ1.5~2倍の量の薬が処方されることが多い。喫煙本数を減らしたり禁煙したりすると結果的に薬の量は過剰となり、頭痛、どうき、めまいなどの中毒症状を起こすことがある。
テオフィリン服用中に禁煙し、ドリンク剤で元気を出そうなどとするのも危険だ。ドリンク剤には一時的に元気が出たような気分にするためのカフェインが含まれている。テオフィリンはこのカフェインと構造式がよく似ていて、その相乗作用でテオフィリンの効き目が強められるからだ。
また喫煙は末しょう血管を急激に収縮させるため、吸い続ければ動脈硬化を促進させる。
たばこが体や薬に与える影響で良いものなど一つもない