『第202話』 昔ながらの処方、下痢にタンニン
新しい薬が次々と登場する中、昔の処方が今も変わらず生きているものがある。下痢のときに処方されるタンニン酸アルブミンと天然ケイ酸アルミニウムという薬の組み合わせもその一つだ。
前者はタンナルビンとも呼ばれ、小腸のアルカリ性消化液で徐々に分解され、タンニン酸という物質になって効力を発揮する。タンニン酸は傷や炎症を起こしている粘膜の上に薄い膜をつくって治癒を促進させる。
タンニンは紅茶をはじめ、さまざまな植物や樹皮に含まれているが、この名は英語で皮なめしという意味のタンニングに由来している。
タンニンは動物の皮に含まれるタンパク質を凝固させ、皮の腐敗を防ぐ作用がある。このことを経験的に知っていた昔の人々は、皮なめしにはタンニンを多量に含むカシワ、ナラ、カシなどの木の樹皮を使っていた。余談だが昔はインクもタンニンから作っていた。タンニンの水溶液に鉄の化合物を加えるとインク独特のブルーを発色させることができる。
またワインを醸造するときタンニンを加えると、ワインの透明度を増すことができる。これはワインを濁らせる原因となるタンパク質や窒素化合物にタン.ニンが結合して沈殿するためだ。
陽においても、腸粘膜のタンパクと結合して皮膜をつくり、炎症部分からの分泌や刺激を抑えて下痢を止める働きをする。
一方、天然ケイ酸アルミニウムはアドソルビンとも呼ばれる多孔性物質だ。そのため細菌性毒素など下痢を起こす有害物質を吸着して腸管を保護する。ただし栄養物も吸着してしまうので長期間の服用は避け、食前か食間(食後2時間ほど後)に服用するのが良い