『第239話』 用途に適応した体温計選び必要
体調が悪いとき、必ず手にするのが体温計だ。医者に行くべきか、大衆薬で済ませるかを決めるうえで、その数値は大事な目安になる。
最初に体温を計ったのは、17世紀の科学者サントリオ・サントリオだが、体温と病気を関連付けたのはカルル・ウンデルリッヒだ。1868年に出版した「病気と体温の関係」で、特定の疾病に特有の熱型グラフがある、と書いている。
最近は水銀式体温計のほかに、電子式も出回っている。
体温計は目的別に次の二つに分けられる。一つは風邪をひいたときなどわきの下にはさんで使う一般的な体温計。もう一つは、36~37度付近を正確に計れるように設計した婦人体温計だ。朝起きたとき、口に入れて基礎体温を計り、排卵後に上昇するわずか0.6度の温度差をとらえる。少し高価だが、毎朝の基礎体温を記録し、グラフ化する機能が付いている電子式婦人体温計もある。
電子式の体温計には、実際の温度を示す実測式と、数分間計って、その値と温度上昇の速さを基に10分以上計ったときの値を割り出す予測式がある。両方式を兼ねた体温計もあるので、購入する際は薬剤師に相談し、取扱説明書をよく読んで正しく使ってほしい。
一般的な体温計の数値は42度が上限だ。これ以上の表示がないのは、そこが、人のタンパク質が変性する「42度の壁」といわれる温度だからだ。体温が39度を超えると脳細胞の活動に影響が出てくる。普段から温度が高い肝臓は41度で機能を停止する。42度では人の細胞がゆで卵状態になってしまい、生きていられない。
しかし超人はいるもので、1980年、日射病で46.5度もあった52歳の男性が無事退院したことが、ギネスブックに記録されている