『第292話』 気功で脳にα波、ストレスに効く

仕事でのストレスをとるために気功を続けている友人がいる。

気功といえば、中国伝来の、呼吸を意識してゆるやかな動きを繰り返す運動という印象がある。

約2000年前に書かれた中国最古の医学書「黄帝内経」には当時の医療法として鍼灸(しんきゅう)、漢方と並んで導引という言葉があり、これが今でいう気功のことだという。

気功が医療と関係があるのは、熟練者が気功を行う時、体にさまざまな変化が生じてくるからだ。

まず大脳にはめい想状態の時に現れるα波が出て、おでこの内側にある前頭葉の活動が活発になる。前頭葉は想像力、企画力を生み出すところだ。自律神経系では交感神経の興奮が収まり、末しょうの血流が改善されてくる。

ところで自分の意志で手足を動かそうとすれば、手足は簡単に動く。ところが心臓や呼吸を止めようとしても止めることはできない。そんなことをしたら簡単に死んでしまう。そうならないのは、自律神経が大脳の命令には従わないシステムになっていて、生死にかかわる臓器は自律神経系が支配しているからだ。

自律神経には交感神経と副交感神経があり、交感神経が興奮すると体は戦闘態勢に入る。

たとえば100メートル競争のスタートラインに立ってピストルの音を待っているようなとき、また山でクマに出遭ってびっくりしたときなどが交感神経が活発に働くときだ。皮膚の血管は収縮して顔面蒼白(そうはく)、一方、心臓や脳の血管は広がって、心臓はドカドカいいながら手や足の筋肉に血液の補給をする。すると筋肉はよく動けるようになり、一目散に逃げたりすることができるのだ。

しかしこれは一種のストレスでもあり、職場や学校では多少なりともこれに近いものは起こっている。

交感神経の興奮が収まると、副交感神経が優位になり、心臓や呼吸はゆっくりとなり、休息状態に適した動きになる。

気功がストレスに効くのはこうしたことによるのかもしれない。