『第294話』 帯状疱疹の薬は、服用方法に注意

皮膚炎というと、かゆいというイメージがあるが、帯状疱疹(ほうしん)は非常に痛い。神経痛のような痛みは皮疹部に一致して生じ、疱疹はウイルスの活動が活発化した神経節の領域に沿って出る。

一般的に帯状疱疹では前触れがあって、発疹の出る数日から1週間前に知覚異常や痛みがあり、やがて異常部位の皮膚に紅斑(こうはん)が現れて水疱(すいほう)状の疱疹になっていく。約3%の患者には治癒後、疼痛(とうつう)が続く帯状疱疹後神経痛という後遺症が残り、これは高齢者ほど多い。

帯状疱疹の原因は水痘ウイルス(VZV)で帯状疱疹と水痘は全く同じウイルスによって発症する。

水痘は主に小児期に発病し、その後二度と掛からない。しかし治癒後、理由は分からないがVZVを神経細胞内に潜伏感染のかたちで保持することになる。従ってほとんどの人は、帯状疱疹になる可能性を持っている。水痘は全身症状として現れるが、帯状疱疹は局所性で、局部的に防御機構が破たんするためと考えられる。

このため、抗がん剤を服用している人や成人T細胞白血病などで免疫力の低下した人が発症しやすい。

治療にはアシクロビルやビダラビンといった抗ウイルス薬を使用するが、これらはウイルスの増殖を抑制する薬で、ウイルス増殖の初期、発疹出現後5日以内に投与を開始する必要がある。このため、増殖完了後に投与しても臨床的効果は薄く、効果が出るのも1~2日後からだ。

抗ウイルス薬ソリブジンは抗がん剤5-FUなどとの相互作用で死亡例が出ているので併用しない。漢方薬では五苓散(ごれいさん)、柴朴湯(さいぼくとう)、柴苓湯(さいれいとう)など多くの使用報告がある。疼痛に対しては、非ステロイド性消炎鎮痛剤を内服する。

帯状疱疹後神経痛に移行した場合は、り患部が低温化している場合があるので、温熱療法を試みることがある。

帯状疱疹は高齢者に多く、働き盛りの年齢では体力を使う男性が多く掛かる。完治まで約3週間掛かる。連休明けの疲労は大敵、休養を十分にとることは予防につながる。