『第302話』 気管支拡張剤の過剰投与に注意
5月に厚生省は緊張安全性情報で臭化水素酸フェノテレノールエアゾール製剤の過量投与と喘息(ぜんそく)死について医療機関に通知している。
気管支喘息の治療薬には抗アレルギー薬と気管支を拡張させる薬を使う。
気管支が狭くなると気道の抵抗が増え、気道を通る呼気で気管支を過剰に刺激して連続した激しい咳(せき)込みが起こる。これを防ぐために気管支拡張剤を使って気管支を広げる。
気管支拡張薬にはテオフィリン製剤とアドレナリン作動薬を使う。アドレナリン作動薬は交感神経末端の器官に作用して、心機能を高める作用と血管や腸管の平滑筋を弛緩(しかん)させ、気管支筋を拡張させる作用を併せ持っている。
初期の気管支拡張薬は心臓に対する作用と気管支筋に対する作用を区別して効果を発揮することができなかったが、最近の気管支拡張薬は気管支筋だけを拡張させる薬に改良されている。
これは、過剰に心機能を高めてしまうと不整脈や心機能停止といった重い副作用につながる可能性があるからだ。
一方、投与方法も改良され、発作時に口元で吹き込むエアゾール製剤が考案された。
エアゾール製剤は深呼吸しながら口元でシュッと噴き付ける簡便さと即効性が特徴だ。しかし、この簡便さと非常に苦しい発作をやわらげたいとする患者心理が過剰投与を生むことになる。
確かに気管支筋への選択性は高まったが、心臓への刺激がまったくなくなったわけではない。2回3回と連続して投与すれば、当然過量投与になる。また発作の最大時には有効に吸入することができず、口腔中に残った薬を飲み込むことも過量投与につながる。このため添付文書には投与回数、投与間隔、うがいをすることなどが非常に細かく記載されている。このことを熟知して使用することが肝要だ。
喘息は単に何らかの要因によって、気道が狭くなったのではなく、慢性の気道の炎症性疾患と考えられ、抗アレルギー剤や抗炎症作用を持つ吸入ステロイド剤の使用を基礎に、対症療法として気管支拡張剤を使用するようになってきている。