『第312話』 強力胃腸薬市販、薬剤師に相談を
ヒスタミンH2受容体拮抗(きっこう)薬のテレビコマーシャルをよく見掛けるようになった。「医療用薬で使われていた薬がOTC(大衆薬)になりました。医師・薬剤師にご相談のうえ、ご使用ください」というものだ。
こうしたセルフメディケーション(自己管理による治療)を充実させていくためには確実な医薬品情報の提供(健康相談の充実)や医薬品を使用するだけでなく、使用した後の相談や調査を今まで以上にしっかりと行っていく必要がある。
ヒスタミンH2受容体拮抗薬は胃痛、胸やけ、もたれ、むかつきといった症状に効果を発揮する。胃はストレスや飲み過ぎ、食べ過ぎによって胃酸が過剰に分泌してしまう。この症状を直接抑えるのがこの薬の特徴だ。
生理活性物質のヒスタミンは胃酸を分泌させるメカニズムの一部を担っている。胃にはヒスタミンH2受容体といわれるヒスタミンを受け取る受け皿がある。この受け皿がヒスタミンを受け取ると胃酸が分泌される。ヒスタミンH2受容体がヒスタミンを受け取らないように邪魔をするのがヒスタミンH2受容体拮抗薬だ。この薬の出現で、胃潰瘍(かいよう)の手術が激減した。
代表的な副作用には血液障害がある。これに伴って現れる症状として、気分が悪くなったり、発熱して喉(のど)が痛いなどの体調の異常や内出血が治りにくいとか歯肉からの血がにじむといったことが報告されている。しかし、服用量が少ないことや使用日数が3日と頓服(とんぷく)的な使い方をすることから安全性は確保されていると考えられる。今までに見られなかったことは、薬とともにアンケート調査用紙が渡されることだ。厚生省は使用後の報告を直接製薬メーカーに使用者が報告することを求めた。集められた情報はさらに安全性を確保する目的で使用される。この動きを安全性確保のための新たな具体策として注目したい。