『第406話』 虫刺され予防に忌避剤
夏休みに入り、水泳やハイキングと屋外での活動が増えてくる。暑い盛りには肌の露出面も広くなり、蚊、ブヨ、アブ、ダニ、ツツガムシといった吸血害虫たちの格好の餌食(えじき)となる。
この虫刺されを予防するために、忌避剤を使用する方法がある。1957年から使われはじめ、ディートまたはジエチルトルアミドとも呼ばれる成分が使われている。ほとんどは医薬部外品だが、12%含有製剤でツツガムシ忌避に効果がある医薬品もある。ディートが虫の触覚にある感覚毛表皮の穴に入り込むと吸血行動を麻痺(まひ)させて効果を発揮する。
剤形はスプレー、ジェル、ティッシュに染み込んでいて拭(ふ)くタイプのものなどさまざまで、首筋、腕、足などの露出したところに塗布する。ツツガムシの場合は4~6時間ごとに露出部分と履物、ズボンのすそなどにむらなく塗る。
忌避剤はむらなく塗らないと効果が薄れる。スプレータイプであれば噴霧した後、てのひらで塗り広げるようにする。子供に使う場合は、いったん大人の手に取ってから子供に塗るようにする。その点、ティッシュタイプであれば使いやすい。子供は塗ったところを手でこすり、その手で目をこすったりすることが多いので注意が必要だ。スプレータイプだと鼻や目の粘膜に刺激を与えるので、顔に塗る場合はいったん手に取ってから塗るか、ジェルタイプのものを使う。妊婦に対しては安全性が確立されていないので使用しないほうが無難だ。
初めて使う人は、上腕部の内側に塗ってみて、異常がないことを確かめたうえで使ってもらいたい。
薬によらない方法では、蚊を超音波で寄せ付けない器具もある。特に蚊は、炭酸ガスに集まる性質がある。ビールを飲むと炭酸ガスの発生量が増えて、蚊が集まりやすくなるので、屋外のビアホールでは刺されないように注意が必要だ。
刺されてしまったら抗ヒスタミン剤やかゆみを抑えるクロタミトン、炎症を鎮めるグリチルレチン酸を含有する軟膏(なんこう)剤や液剤を使用することになる。
衛生状態の悪い外国では吸血害虫が媒介する伝染病が発生している。是非、海外旅行には携帯したいものだ。