『第415話』 ビタミン剤摂取に注意
アメリカのスーパーマーケットでは、各種のビタミン剤が山積みになって売られている。つまり、アメリカではビタミン剤は薬ではなく、食品と同じ扱いなのだ。
かつては病気を治す薬であったのに対し、現代人の使い方はこうだ。ビタミンCを大量に摂(と)って風邪の予防をする。ビタミンEを皮膚に塗る、または飲んで日焼けによる炎症やしみ、しわを防ぐといった具合いだ。確かに紫外線が当たることによって体内に生じる活性化酸素は老化の原因の一つとされ、さまざまな障害をもたらすが、ビタミンEにはそれを防ぐ効果がある。
夜盲症に処方されたビタミンAも、今では近年増加するドライアイに有効とされ、また高齢者のカルシウム不足にはビタミンDの助けが必要なことから、肝油が見直されている。このようにビタミン剤は老化防止、病気予防に使われるものへとその役割を変えつつある。
しかしながら、医薬品と認められている以上、その効能はあくまでも病気を治すことに限られているため、風邪の予防や老化の予防をはっきりと表示できない。
例えば医薬品の表示があるビタミンEの効能書きは手足の冷えやしびれ、しもやけといった末しょう血行障害と、肩こり、不眠など更年期障害に関連した症状に対するものに限定される。
近ごろサプリメントという呼び方で売られているビタミン類にはこうした効能効果は表示できないことになっている。そのためかえってあいまいな表現が多く、消費者によってさまざまなイメージをもたれやすい。サプリメントは栄養補助食品を意味し、ふだんの食生活で栄養を摂りきれないときに補うものと解釈される。
ビタミン類のほか、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄などさまざまなものがサプリメントとして売られている。
しかし、中身が似ていても、医薬品の場合は含有量や有効性など品質の面で厳しい基準をクリアしたものだ。成分、含有量はもとより、効能、効果、用法、用量が明記され、薬局、薬店以外で販売することはできない。
食品の範ちゅうに入ったビタミン剤でも摂り過ぎにはくれぐれも注意が必要。ビタミンEやA、Dは脂溶性ビタミンで過剰摂取すると、体に蓄積して副作用を起こすことがある。
ビタミンAを妊娠中に過剰に摂取すると、先天性の異常児が生まれる割合が高くなるとされ、肝臓肥大や脱毛、骨折が起こりやすくなる。ビタミンDでは腎(じん)機能不全や紫外線で皮膚の色が黒くなりやすいなどの報告がある。