『第416話』 点眼剤の保存条件

保存が難しい医薬品に点眼薬がある。液体のため、取り扱い方法によっては汚染を受けやすく、ビタミン剤を含有するものは、微生物にとっても格好の栄養剤となる。

保存方法といっても、単に冷蔵庫に入れて保存すればよいというものでもない。重要なのはその使い方にある。

点眼するときにまつげの先が点眼剤容器の先端に触れていたり、不衛生な取り扱いによって点眼液が汚染されることの方が怖い。

医薬品の承認に当たっては、長期保存試験、苛酷(かこく)試験、加速試験といった品質の安定性を確認する試験が行われている。

一定の流通期間中に品質が変化するかを調べるためには加速試験で推定している。その条件は40度または保存条件に指定したい温度に15度を加えた温度と湿度70%の環境に6カ月間保存するというものだ。これによって25度または指定した温度で湿度60%に3年間保存した状態を推定する。従って、標準的な点眼剤の保存湿度は25度ということになる。しかし、冷暗所保存(15度以下の日光の当たらない場所)や指定した保存温度設定がある点眼剤もあり、薬局・薬店で保存温度を確認しておく必要がある。

実際には低温保存が指定されていても、仕事中や旅行で指定の温度に保存できないことがあるので、衛生的に使用する習慣を身に付けたい。

目薬が処方された場合、使用期間をお知らせしないことがあるが、おおむね5ミリリットルの内容量がある医療用点眼剤を両眼に1日3~4回点眼した場合、約1週間と考えればよい。

一般用医薬品(大衆薬)の点眼剤の多くは約15ミリリットルの容器になっていて、開封したら1カ月以内が使用期限だ。

目薬の中には使用時に錠剤を溶解液に溶かして点眼するものがある。実際にあったことだが、錠剤を飲んだ後、溶解液を点眼しているがなかなか治らないと薬局で話をして、初めて溶解して使う点眼剤があることを知ったという人もいる。

目薬も医薬品、安易に考えず、点眼の方法や保存方法を確認し、大切に取り扱ってもらいたい。