『第417話』 多様な症状に効く柿

 

柿(かき)が色づく季節になった。周辺を見回すと、秋の野山にはアザミや桔梗(キキョウ)、菊など薬になるものばかり。

とはいってもすぐさま口の中に放り込むわけにはいかない。皮をはいだり、干したり煎(せん)じたりと幾手間のかかる作業だ。さらに薬として十分な効果を発揮する種類を見分ける眼識も必要だ。

比較的簡単にできるのは柿のへたを乾かしたもの。実の熟したころの柿のへたを採ってもいいし、もちろん実を食べた後のへたを取っておいて十分に乾かして使ってもいい。

柿のへたは柿蔕(してい)といい、しゃっくりの特効薬になる。

乾かした柿のへた10個くらいを200ミリリットルの水で半分くらいまで煎じて飲む。この中にはオレアノール酸やウルソール酸という物質が含まれている。

漢方処方では、これに丁子(ちょうじ)、生姜(しょうきょう)を加えた「柿蔕湯」があり、しゃっくりや吐き気止めに用いられる。

柿の葉には野菜やくだものよりも多量にビタミンCが含まれているので、柿の葉を蒸して乾かし、煎じてお茶替わりにして飲むのもよい。

柿のシブにはシブロールと呼ばれるタンニンが含まれ、これが消炎、収斂(しゅうれん)作用を持つことから、この柿のしぶを集めて、痔(じ)の患部や霜焼け、虫刺されなどに用いるという民間療法も残されている。

また干し柿の表面につく白い粉は柿霜(しそう)といい、ある地方ではそれを咳(せき)止めや歯痛に用いるそうだ。柿の木は古くから薬木と呼ばれるようにさまざまな薬効を持つ木だ。

桔梗は漢名で、古名は蟻(あり)の火吹きという名がついていた。

薬としては2~3年たったものの根をそのまま乾かすか、コルク層と呼ばれる皮をはいで乾かしたものを使う。神農本草経によれば、胸痛や腹が張り腸がぐっぐっとなる症状によいとある。ほかにも痰(たん)を取り、咳を鎮め、のどの痛みを取ることから種々の漢方処方に配合されている。市販の咳止めやのどの薬を買ったとき、ちょっと成分表を見ていただくと桔梗の名を見つけるはずだ。

菊は今では薬よりも食用の需要が大きく、花弁が薄紫色の「もってのほか」はとても味が良く、薬膳にも利用されている。