『第419話』 パーキンソン病とその薬
50~60代にかけて発症しやすくなる病気の一つにパーキンソン病がある。
じっとしていると手足が小刻みに震えたりするが、箸(はし)や茶わんを持つなど何か動作をすると震えは治まる。このような症状に始まり、やがて、動作がぎこちなく、歩こうと思っても歩き始めるまで時間が掛かるようになる。歩いているつもりでも足を引きずっていたり、途中から走ったりして歩くリズムが分からず転びやすくなるなどの症状が特徴的に現れてくる。
私たちが体を動かそうとするとき、脳から筋肉へ「この筋肉を使いなさい」という命令が伝わる。この命令は主にドパミンとアセチルコリンという神経物質がその役割を担っている。
正常な運動ができるのはこの二つの物質のバランスがとれているからだ。どちらか一方でもその量が増えたり減ったりすれば、動作がうまくできなくなる。
特にドパミンが不足するとパーキンソン病が発症する。ドパミンは中脳の「黒質」と呼ばれる神経細胞でつくられるが、この部分が何らかの原因で壊されてくるとドパミンが不足してくる。
従って治療としては不足したドパミンを補充すればこの症状は食い止められる。脳内でドパミンに変化する薬、それがレポドパ(またはL-ドパともいう)製剤だ。
これによりパーキンソン病の死亡率は激減したといわれる。ただし、長期にわたって使用していると次第に効果が弱くなり、増量を余儀なくされる。
しかし、量を増やし過ぎると、頭や首、手足が無意識にくねくね動くジスキネジアという症状や、幻覚や妄想といった精神症状も現れやすくなる。
このような副作用を軽減するため、複数の薬を組み合わせてレポドパの増量を避け、効く時間を延長させたりする工夫が必要になる。そのため病状が安定しているにもかかわらず、新たに薬を追加されることもある。
パーキンソン病の場合、運動も欠かせない。朝夕合わせて30分ぐらいの散歩を心掛け、また昼寝をしないことも効果があるという。昼寝はドパミンの命令を受け取る脳の線条体という部分の働きを悪くするからだ。