『第421話』 インフルエンザの予防

インフルエンザと風邪を混同している人が多い。風邪の原因となるウイルスは200種類以上ある。従って、正しくは患者からインフルエンザウイルスが分離された場合にのみ、インフルエンザにかかったということになる。インフルエンザワクチン(以下HAワクチン)を摂取した場合でもほかのウイルスによって風邪にかかることがあり、HAワクチンは効かないという誤解を招いているようだ。

また、ワクチンの効果を「有効率80%」などと表現する。これは「ワクチンを接種しても100人のうち80人にしか効果がない」という意味ではなく、「ワクチンを接種しないで発症した100人のうち80人は、摂取をしていれば発症を免れた」ということを意味している。こうした誤解も不信感を助長している。

65歳以上の高齢者、乳幼児、妊婦、さらに年齢を問わず呼吸器系や循環器系に慢性疾患を持つ患者、糖尿病、慢性腎不全、免疫不全の患者はハイリスク群とされ、インフルエンザにかかることによって重い肺炎、気管支炎などを併発する危険性が高まる。

米国では毎年のようにワクチンの効果を調べて公表しているが、それによると、ワクチン接種によって、65歳未満の健常者についてはインフルエンザの発症を70~90%減らすことができる。また、65歳以上の一般高齢者では肺炎やインフルエンザによる入院を30~70%減らすことができるとされている。老人施設の入居者については、インフルエンザの発症を30~40%、肺炎やインフルエンザによる入院を50~60%、死亡する危険を80%、それぞれ減少させることができる。

HAワクチンは、ウイルスをエーテルで部分分解して副反応の原因と考えられている脂質成分を除去した後に、ホルマリンで殺菌処理してつくっている。こうしてウイルスの一部を使うワクチンをコンポーネントワクチンという。

ウイルスの増殖には鶏卵を使うため、微量の卵由来の成分が混入している。これによって発赤やじんましんなどの局所反応やアナフィラキシー・ショックを起こすことがあるので、卵アレルギーの人はワクチン接種を避けるか、注意して接種する必要がある。

HAワクチンによる有効な防御免疫の持続期間は3カ月程度と短い。12月はインフルエンザのシーズンに入るので、その1カ月前の今月が接種開始時期となる。

HAワクチンは4週間の間隔を空けて2回接種する。効果が現れるには接種が終了してから2週間程度かかる。秋は冬支度の準備に入る季節だ。是非、インフルエンザの予防にも気を使っておきたいものだ。