『第443話』 セント・ジョーンズ・ワートと薬物の相互作用

医薬品と食品が相互に作用しあって、薬の効果を弱めたり、強めたりすることがある。国際化の時代にあって、国内で流通する食品だけではなく、外国の食品、特に健康食品、サプリメント製品、日本では医薬品として認可されていないハーブが問題となることがある。

イギリスでセント・ジョーンズ・ワート(和名=セイヨウオトギリソウ)製品による重大な相互作用の危険性が指摘されている。

セント・ジョーンズ・ワートは「聖ヨハネの薬草」といわれ、悪霊から守る力のある植物として古くはギリシャ時代から使われてきた。内用するだけではなく、傷薬として外用剤としても利用された。

イギリスや米国では健康食品扱いとなっているが、ドイツでは、セント・ジョーンズ・ワート製剤を抗うつ剤として認可している。その作用は、脳内のセロトニン作動性神経を活性化すると言われ、最近日本でも医薬品として認可され、話題となった抗うつ薬SSRI(selectiveserotoninreuptakeinhibitor)マレイン酸フルボキサミンと同様の作用があるとされている。過去からセント・ジョーンズ・ワート製剤を使用していて、さらにSSRIを使用すると作用が増強する恐れがある。

また、セント・ジョーンズ・ワートには肝臓で薬物を分解する酵素の活性を高める効果があって、ワルファリン、ジゴキシン、テオフィリン、抗てんかん薬、シクロスポリン、経口避妊薬、抗エイズ薬等の効果を弱めてしまう。

多くの健康関連商品が旅行や個人輸入の形で日本に持ち込まれている。しかし、こうした商品を諸外国で購入するのには動機があるはずで、治療を要する自覚症状や既に治療をしている場合がほとんどだ。治療している場合には薬も処方されているはず。日本では医薬品として認可されていない健康食品や医薬品を使用して、治療の妨げとならないように、最新の情報を入手するよう心がけたいものだ。