『第611話』 【アマメシバ】摂取量の見直しは必要

今月5日、厚生労働省は「天芽芝」(あまめしば)を継続的に摂取していた女性に、呼吸器障害が発生していたと公表した。

台湾においては、1994年から2000年にかけて、生鮮アマメシバのジュースをダイエット目的に摂取していた女性200-300人に、同様の肺障害が発生し、このうち10人前後か死亡したという報告がある。

日本の症例では、健康食品として流通している製品を1回2グラム、1日4回、計8グラムを130日間服用して発症している。この1日摂取量は、健康食品の説明書に書いてある量で、不適切な量とは言えない。しかし、台湾の例も考え合わせ、摂取量の見直しは必要と思われる。

報告者は、ほかに疾病の原因がなく、外国での報告例があることからアマメシバを疑っている。

アマメシバは、マレーシア、ボルネオなどの東南アジアを原産とする樹木で、その新芽を食べるため「木から採れる野菜」と言われる緑黄色野菜。食物繊維、ベータカロチン、マグネシウム、鉄分を非常に多く含んでいる。

しかし、食品分析では分からない何らかの物質があって、摂取者の体質も関係し、免疫反応を起こしている可能性が指摘されている。

さて、ここで再確認しておきたいことは、「1日30食品」をということだ。

1985年に、厚生省(当時)は「健康づくりのための食生活指針」を発表した。この中で、栄養のバランスをとるために、この標語で呼びかけた。しかし、この標語には科学的裏付けがない。当時は、ファーストフード食品、総菜などの加工食品が定着し始めて、科学的根拠よりも栄養の偏りが心配されたのだろう。

2000年に策定された「食生活指針」では、「1日30食品」の標語は削除されてしまった。しかし、栄養素をバランス良く食事から摂る必要性は変わっていない。

特定の食品だけを摂取することは、よく解明されていない物質を過剰に摂取することにつながり、こうした物質が人体に何らかの影響を与える可能性がある。数多い食品から栄養を摂取することは、毒性物質の分散につながる。そういう意味でも幅広く多種の食品を摂取していくことが必要だ。

「1日30食品」の趣旨を忘れずに、豊かな食生活を送ってもらいたい。