『第610話』 【生物由来医薬品】安全確保へ薬事法改正
生物由来医薬品の安全性が問題になってからしばらくたった。だが、ここに来て特に血液製剤の問題が再び取り上げられている。現状ではそのリスクを越えて使用しなければならない場合があり、現場の医療機関ではこのことを十分に説明し、文書で承諾を得てから使用している。
現在、献血血液は梅毒、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、エイズウイルス、HTLV-I抗体、ヒトパルボウイルスB19抗原の検査が行われている。
このうちC型・B型肝炎ウイルス、エイズウイルス検査では、日本が世界に先駆けて1999年に核酸増幅検査を導入した。これを早期に導入したのは、感染してから陽性が判定できる期間「ウインドウ・ピリオド」を短くしたいからだ。核酸増幅検査はウイルスのDNAを100万倍に増幅させて検出する方法で、抗原抗体反応を利用するよりも検出感度が高い。これによって、検出できる期間がB型肝炎ウイルスでは59日が34日、C型肝炎ウイルスで82日が23日、エイズウイルスで22日が11日に短縮された。
この検査方法を用いても、今の技術ではこれらの感染症を完全に防ぐことはできない。そこで、生物由来の医薬品全般に対して安全性を高めるため、先月30日に改正薬事法が施行された。
この中では、ワクチンや動物由来心臓弁などの生物由来製品と血液製剤などの特定生物由来製品の定義を明確にして、情報提供を義務付けるとともに、遡及(そきゅう)調査を容易にするために特定生物由来製品の使用歴を記録し、20年間保存することを医療機関に義務付けた。同時に、安全な血液製剤を供給することを目的に、国内自給などを国に義務付ける血液法も施行された。
諸外国よりも遅れているといわれるウイルスを不活化する製剤技術や、保存が可能な血液製剤を一時保管して安全性を確認することなど、取り組んでいかなければならない課題がある。それとともに、安全な血液製剤の供給は、献血とウインドウ・ピリオドに対する国民の理解と感染症を防ぐ協力がなくては成り立たない。ぜひ、ご理解とご協力を賜りたい。