『第606話』 【ホルマリン】安全性を考えて使用を
ホルマリンがエラムシの駆虫剤として、養殖フグに使われていた問題が取り上げられている。
化学が好きな人であれば、ホルマリンと聞くと「臭いよねー」と答えるだろう。それほど、特異的で、気分が悪くなって吐き気を催し、かげば一生忘れないにおいがする。このにおいはホルムアルデヒドのにおいで、ホルマリンは、ホルムアルデヒドを35~38%含む水溶液だ。
戦後のころ「バクダン」と呼ばれたお酒があった。これは、高濃度の工業用エチルアルコールを飲用に転用したお酒だったようだが、このアルコールは不純物としてメチルアルコールを含んでいた。そのため、「バクダン」を飲んだ人の中には失明者が続出した。
メチルアルコールは、体内でホルムアルデヒドになる。ちなみに、エチルアルコールの場合はアセトアルデヒドになり、これが二日酔いを引き起こす。ホルムアルデヒドはさらに体内で蟻酸(ぎさん)に代謝される。これらの代謝物が視神経に障害を与える。ホルムアルデヒドは、工業的にもメチルアルコールを酸化して製造する。
エチルアルコールには炭素が二つあるが、メチルアルコールは一つだ。このため燃焼させるとススが出にくい。従って燃料用アルコールとして、コーヒーを入れるときのサイホンなどのアルコールランプの燃料としてよく使われている。毒性が高いので、誤飲を防ぐために一般に着色している。ところが、変性アルコールという名称で、エチルアルコールにメチルアルコールが入っている燃料用アルコールや、メチルアルコールでも着色していないものがあるので、十分に注意する必要がある。誤飲した場合は、胃洗浄や血液透析を行うこともあり、すぐに病院に行かなければならない。
ホルムアルデヒドには発がん性があるが、天然の食品にも含まれている。また、「シックハウス症候群」の原因物質でもあり、建材から揮発して頭痛、目まい、吐き気を起こす。このため25度で、0.08ppm以下の基準がある。
医療用としては、器具や室内の消毒に使われているが、使用に当たっては、安全性を考えて使う必要がある。当然、海洋汚染を引き起こす使い方は慎んでもらいたいものだ。