『第604話』 【OTC睡眠改善薬】風邪薬の効能を利用

風邪薬やアレルギーの治療薬を渡されるときに、「眠くなるので、自動車の運転や機械などの取り扱いに注意してくださいね」と言われたことがあると思う。その理由は、鼻水や風邪の炎症を抑えるために抗ヒスタミン薬が入っていて、その副作用として眠気が出てくるからだ。

今年4月1日、この副作用を主作用の効能・効果とした薬が大衆薬(OTC薬)として発売された。成分は塩酸ジフェンヒドラミンで、一時的な不眠により、寝つきが悪い、眠りが浅いといった症状の緩和に使う。

塩酸ジフェンヒドラミンには中枢抑制作用があり、吐き気を抑え、眠気を催す。既に、この効果を狙った睡眠改善薬として、米国、英国、ドイツなどでは大衆薬として販売されてきた。このほか、動揺病(乗物酔い)を予防・治療する薬としても使う。眠気は、相乗効果として車酔いを和らげてくれる。しかし、こうした中枢抑制作用や動揺病の抑制効果が起こる仕組みは解っていない。

注意しておく必要があるのは、子供が大量に服用すると中枢興奮症状が表れ、けいれんや運動失調、振戦(しんせん)が起こる可能性があることだ。従って、子供の手の届かないところに保管し、十五歳未満の子供には使わないことが重要だ。

また、塩酸ジフェンヒドラミンには抗コリン作用があり、のどが渇く副作用がある。緑内障や前立腺(せん)肥大などの下部尿路に閉塞(へいそく)性疾患がある人は、これらの疾患を悪化させるので使えない。

厚生労働省は今年3月に「健康づくりのための睡眠指針(快適な睡眠のための7カ条)」をまとめた。

__運動習慣は熟睡をもたらし、朝食は心と体の目覚めに重要__自分に合った睡眠時間があり、「8時間」にこだわらない__カフェイン摂取は寝付きを悪くし、睡眠薬代わりの寝酒は睡眠の質を悪くする__軽い読書、音楽、香りでリラックス。ぬるめの入浴で寝付きよく__目が覚めたら日光を取り入れて、体内時計をスイッチオン。同じ時刻に毎日起床、早起きが早寝に通じる__午後の眠気をやり過ごす。長い昼寝は、ぼんやりのもと。昼寝は午後3時前の20~30分__睡眠障害は専門家に相談する-といった内容だ。

これらの指針を心がけ、新睡眠改善薬を正しく使ってもらいたい。