『第599話』 【健康増進法】施行を機会に禁煙を
薬局に、たばこを1日60本吸うと豪語する、循環器疾患の患者が処方せんを持って来る。最初はたばこをやめなさいときつく生活指導した。すると、俺の楽しみを奪うのかとけんかになった。患者さんのことを思うとついつい言葉がきつくなる。
次に来た時、60本を59本にしなさいと話す。仕方がない、試してみるかという顔で帰る。再び来た時、軽いたばこに代えたと言うので、一歩前進、評価しますと激励した。実際は、軽いたばこにしても意味がないことは分かっているが、意識改革が起こっていることをうれしく思った。
嫌煙権と喫煙権、これに併せて農業振興、経済問題、文化論とさまざまな議論が展開されている。しかし、健康被害の重大性を知っている薬剤師としては、禁煙の一手しかない。
この5月1日から健康増進法が施行され、当会はこれを記念し、県薬剤師会館を全館禁煙とした。
厚生労働省は「職場における喫煙対策のためのガイドライン」を7年ぶりに改正する方針を決めた。喫煙コーナーを設けて、空気洗浄機を設置するだけでは不十分。煙が漏れない喫煙室とし煙は屋外に排出することを求めている。
健康増進法では学校、病院、官公庁施設、飲食店などを利用する人の受動喫煙(室内またはこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされることをいう)を防止するために、必要な措置を講ずるように努めなければならない、としている。
日本の喫煙率は、先進国の中でも極めて高い。男性の喫煙率は約50%。女性の20~30代の喫煙率は40代に比べて高いことから、将来的に喫煙率が上がるのではないかと懸念されている。
さらに、本来であれば喫煙できないはずの未成年者においても、高校3年生男子が36.9%、同じく女子で15.6%に喫煙経験があり、禁煙対策が進まない現状がある。
コペンハーゲン(デンマーク)の空港では「吸うと死にます」と表示されてたばこが売られている。合法のし好品を規制していくことは非常に困難だが、世界保健機関(WHO)たばこ対策枠組条約の締結も検討されている。
禁煙をしようと思っている人には、ニコチンガムや、処方せんが必要なニコチンパッチがある。健康増進法の施行を機会に、ぜひ、禁煙に取り組んでもらいたい。