『第560話』 【エタノール】少量ならストレス解消
本県は1人当たりの酒消費量が常に上位。酒にはエタノールが含まれている。このため、エタノールを飲用アルコールという。
エタノールの効用については、少量であれば血行を促進し、ストレス解消に役立つ。しかし、大量に飲めば、肝機能障害やキッチンドランカーなどのアルコール依存症にまで至ることはよく知られている。飲酒量と死亡率の関係を曲線で結ぶとJの字になるので、この関係を「Jカーブ効果」と呼んでいる。
76.9~81.4%のエタノールは消毒液として使う。しかし、消毒用エタノールは酒税が課せられるため高い。そこで、50~60%のイソプロピルアルコールを消毒剤として使うことがある。これ以外のアルコールを医療現場で使うことはない。
エタノールは、アセトアルデヒド、酢酸、炭酸ガスと水の順に代謝される。従って、アルコールを飲むと二日酔いの原因になるアセトアルデヒドが合成され、さらに、炭酸ガスに集まる性質を持っている蚊の攻撃を受けることになるというわけだ。
アルコールの中でもメタノールは猛毒だ。戦後間もないころ、アルコールが欲しくてメタノールを含有する粗悪な酒を飲んで、失明者が出たことがある。
メタノールはホルムアルデヒド、蟻酸(ぎさん)の順に代謝する。これらの代謝物が視神経を侵す。
ホルムアルデヒドを水に溶かすとホルマリンになる。ホルマリンはタンパクを凝固する作用が強く、臓器を長期保存する保存防腐液として使う。炭素が1個しかないためススが出にくいので、燃料用アルコールとしての利点がある。
エタノールとメタノールを等量ずつ混合したアルコールを変性アルコールといい、コーヒーサイフォンなどのアルコールランプ用燃料として使われている。
蟻酸は、蟻(あり)を水に入れて煮詰めると得られる酸だ。蟻が戦うときにお尻の先から蟻酸を出す。英語ではフォルミック・アシッドといい、フォルミックは蟻を意味する。蟻酸に塩素を化合させると、麻酔薬として使われてきたクロロホルムができる。クロロホルムは塩素化した蟻酸という意味だ。しかし、現在はこのような合成法ではない。
酒談議で盛り上がっていると、蚊に刺されかねない。ご注意を。