『第533話』 【消化酵素】食べ過ぎの時は服用して

正月中は、食べ過ぎで胃腸の調子がおかしかった人もいるのではなかろうか。

おもちを2個食べればご飯1膳(ぜん)を食べたことになる。おもちはご飯より消化されやすいが、食べ過ぎれば同じことだ。

もっとおもちを食べたいと大根おろしをほお張る人がいる。ご承知のとおり、大根にはデンプンを分解するジアスターゼ(アミラーゼともいう)が多く含まれている。

ジアスターゼは、1833年に、フランスのアンセルメ・ペイヤンとジーン・ペルソが初めて麦芽から分離した。

ジアスターゼは「分離する」を意味するギリシャ語からきている。また、一般に酵素の接尾語として「-アーゼ」が使われる。

ビールやウイスキーを製造する過程で、大麦を発芽させた麦芽(モルト)を使う。これは麦芽に含まれるジアスタ一ゼなどの糖化酵素で、大麦のデンプンを分解し、糖に変えるためだ。これに酵母を加えて発酵させると糖がアルコ一ルに変わる。ぶどう酒や、りんご酒は、原料になる果実がグルコース(ブドウ糖)やマルトース(麦芽糖)といった糖をもともと含んでいるので、糖化の工程はいらない。

日本酒は米麹を使う。米麹を使うと糖化とアルコール発酵を並行して行うことができる。米麹の特徴は、麦芽よりも糖化する能力は劣るが、酵母よりもアルコール発酵能力が高いことだ。

米麹でウイスキーを製造しようと考えていた高峰譲吉は、糖化能力の高い酵母「アスペルギルス・オリゼ」を発見した。その後、ジアスターゼには、糖化ジアスターゼ、消化ジアスターゼ、デキストリン化ジアスターゼなどがあり、アスペルギルス・オリゼが産生していたのは、糖化能力の高い消化ジアスターゼであることを明らかにした。一連の仕事は、1894年に特許出願の形でまとめられている。

ところが、米国の麦芽業界の反対や麹室の焼失で、米麹ウイスキーの製造はとん挫する。氏名を冠にしたタカジアスターゼを医薬品とする発想は、こうした出来事があった後、手術を受け、入院している間に思い付いたようだ。

1グラムのタカジアスターゼは、150グラムのデンプンを10分間ですべて糖に変える能力を持っている。

食べ過ぎと思ったら、こうした消化酵素剤を早めに使うのも一考だ。