『第530話』 【漢方】免疫細胞を増やす効果も

体の調節機能がうまく働かなくなると、風邪を何度もひく、力が出ない、疲れが取れないなど漠然とした症状が出る。

漢方医学では体のバランスを「気・血・水」という言葉で表す。

気(き)は形がないのに働きがあるもので、気力がないとか、やる気が起こるなど生命エネルギーに通ずる意味合いがある。

血(けつ)は血液とその働き、および循環を表し、水(すい)は体液とその働きを表す。

この気・血・水の過剰または不足が、異常な状態を引き起こすと考える。

過剰な状態を「実(じつ)」、不足の状態を「虚(きょ)」といい、漢方では、実は減らし、虚は補うような処方が取られる。

虚の中でも「水虚」はけん怠感や無気力、食欲不振、風邪をひきやすい、日中眠い人などが当てはまる。

「血虚」は貧血、皮膚がかさかさ、手足の冷え、髪が抜ける、息切れする人などだ。

虚を補うには補剤を使う。

漢方薬の名前にも補の字が入った補中益気湯(ほちゅうえっきとう)や十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)などがこれに当たる。

また人参養栄湯(にんじんようえいとう)まさに読んで字のごとくだ。

補中益気湯や十全大補湯はマクロファージや

細胞といった免疫力を発揮する細胞の数を増やし、活性化することが分かっている。

ほとんどの細菌感染には抗生物質の力が必要だが、免疫力を強化する意味で漢方は活躍する。

また、治療しにくい、あるいはその必要がないなどとして片付けられる原因不明の冷えや肩こり、イライラ感といった不定愁訴にも効果を発揮する。

風邪の初期に葛根湯(かっこんとう)や麻黄湯(まおうとう)を飲むときは、多量のお湯やうどんのだし汁とともに飲むとよい。体を温め、水分補給ができ、結果として発汗解熱が期待できる。

温かい飲み物は胃の血管を広げ、薬の吸収を良くする。また多量の水分は胃を膨らませ、吸収面積を増やす。胃酸が薄まることで発揮される生薬成分もある。

漢方薬はちょっとした飲み方の工夫で効果がぐっと上がる。薬剤師の知恵を大いに利用してほしい。