『第524話』 【レバー】妊娠前後の食べ過ぎ禁物

大館樹海ドームで行われている第124回種苗交換会に併せ、同所で「薬と健康展」も開催中だ。ここで使うパンフレットに過去の「百薬一話」を掲載している。

これを読んだ薬剤師から、「妊娠中の人が、身体に良いからとレバーを積極的に食べる可能性があるので、注意を喚起しておく必要があるのではないか?」という意見をもらった。

その掲載内容は、先天性異常の一つ、二分脊椎(せきつい)などの神経管閉塞(へいそく)障害の危険性を低減させるために、妊娠1力月以上前から妊娠後3カ月までの間、最低1日当たり0.4ミリグラムの葉酸を摂取する必要があることを書いたものだ。ただし、1日当たりの摂取量は1ミリグラムを超えてはいけない。確かに、その冒頭において、レバーに葉酸が多く含まれていることに触れている。

葉酸を多く摂取できる食品は、緑黄野菜、乾燥状態のそら豆や大豆だ。100グラムで0.2~0.3ミリグラムになるが、日常生活の食事ではどうしても不足しがちになるため、栄養補助食品で摂取する必要が出てくる。しかし、これをレバーから摂取しようとするとビタミンAの過剰摂取が起こる。

レバーは、鉄分も多く、鉄欠乏性貧血の人に摂取してもらいたい食品だ。そのためか、造血機能を高め、健康に良い食品というイメージが定着している。

もう一つの特徴は、ビタミンAを多く含んでいることだ。100グラムの鳥・豚・牛などの肝臓はビタミンAを40,000~47,000IU(国際単位)を含む。ビタミンAの1日必要量は、2,000IU、許容上限は5,000IUだ。このことは、肝臓10グラムで許容上限近くまで摂取できることを示している。

過去に「ビタミン剤摂取に注意」と題してビタミンAを過剰に摂取すると先天性異常が起きる危険性が高まることを解説したことがある。ビタミン剤だけではなく食品から摂取することでも同様のことが起こる。そのリスクが高まる量は、妊娠前3カ月から妊娠3カ月までの間にビタミンAを1日10,000IU以上を毎日摂取した場合だ。

とはいえ、ビタミンAを適正量摂取していく必要はある。毎日レバーを食べることはないと思われるが、妊娠中もしくは妊娠を希望する人は男女ともに栄養摂取の過不足について、情報を得ていくことが必要だ。