『第520話』 【廃用型痴呆の予防】趣味を持ち友人と交流を
脳卒中後に痴呆(ちほう)を発症することがある。脳がダメージを受けたのだから当然と診断されることが多かった。
脳梗塞(こうそく)、脳出血、くも膜下出血などの脳血管障害の後に起こった脳の障害を、脳血管性痴呆とひとまとめにくくってきたところがある。
しかし、ここ20年余りの追跡調査によると、脳卒中後の痴呆は脳卒中が直接の原因ではない場合が大半であるとしている。
脳卒中の数年後に痴呆が起きるのは、退院後の家庭におけるライフスタイルの悪さに原因があり、生きがいも感じず、ただぼんやりと暮らしているうちに脳が使われなくなって起こる廃用型痴呆が考えられる。
興味あることに、この廃用型痴呆になる人は、仕事一筋で生きてきて左脳ばかり使う生活を送ってきた人だという。
反対に趣味も多く、音楽やスポーツを愛し、友達も多かった人は何の痴呆も起こらなかった。
こういう人たちは身体にまひが残ってもどんどん外に出ていき、以前と変わらず趣味を楽しみ、友達との交流も多かった。
脳卒中後に行う脳リハビリがある。脳卒中は寝たきりの原因の3割を占めるが、早期に脳リハビリと適切な治療が行われると、7割の人が歩行可能になり、家族の介護負担も減る。
脳リハビリをしている間は痴呆が生じない。自宅に戻って何となく軽い痴呆を疑う症状があるときは、集団での脳リハビリに参加すべきだ。
3~7歳ころの感受性豊かな時期に、家族をはじめ、周囲から受けた感性教育がその人のライフスタイルにも影響する。
遅くても14歳ころまでに心を豊かにする感性教育を十分に受けると将来、痴呆の予防に大いに役立つと専門家はいう。
仕事一辺倒の生活を軌道修正するなら40代がぎりぎりで、50代ではなかなか難しいといわれている。
痴呆の薬はまだまだ未開発の段階だ。痴呆を予防するためには、感性豊かな日々を過ごし、脳に刺激を与え続けることが重要だ。