『第518話』 【女性ホルモン】一生に3度太りやすい
女性には一生の間に3回太りやすくなる時期がある。
女性ホルモンを分泌する卵巣の機能が大きく変化する思春期、妊娠および出産期、そして更年期だ。
脂肪細胞は性ステロイドホルモンの代謝を担っていて、男性ホルモンから女性ホルモンヘの転換が行われている。
思春期に過激なダイエットをして十分な体脂肪がないと女性ホルモンヘの転換が悪くなり、男性ホルモンの値が高くなって、初潮の遅れや月経異常を引き起こす。
また、脂肪組織は妊娠や出産のためのエネルギーを蓄えている。このため中枢神経(脳)は体にどのくらい脂肪細胞が蓄積されているかを把握していて、妊娠、出産に見合う体脂肪がないと判断すると排卵を抑制してしまう。
エストロゲンと呼ばれる女性ホルモンも脂肪組織で生産され、骨粗しょう症の進行を抑えている。
したがって閉経後はある程度脂肪を蓄えておいた方が骨粗しょう症を予防することができる。
こうしてみると太りやすくなる時期は、女性の身体にとってその機能を維持するために必要なこととみることができる。
さて、皮下脂肪は落としにくい脂肪だ。おしりや太ももの皮下脂肪を落とそうとして食事制限するとたいていバストが小さくなってしまう。
これはまずいと食べ始めても脂肪がつくのはまたもおしりや太ももで、結局バストはやせたままということが多い。
食事制限や運動で落ちやすいのは内蔵脂肪だ。おなかの出たお父さんにはすぐに効果が表れる。
脂肪摂取量が欧米人並みになった今、日本でも発売が待たれている薬がある。
アメリカではすでに使用されているが、脂肪吸収酵素であるリパーゼの働きを阻害して脂肪の吸収を抑える薬剤だ。高カロリーである脂肪が吸収されなければ減量効果は上がる。
必要なときは食べ、そうでないときは食欲に支配されないようにしたい。しかし実際にはそれができないからこのような薬が登場してくることになる。
外見的な問題としてではなく、適正な身体機能の維持の観点でやせや肥満をとらえてもらいたい。