『第513話』 【ニワトリのとさか】若さ保つ成分たっぷり
ニワトリのとさかにはヒアルロン酸という物質が詰まっている。
赤ちゃんや子供の皮膚が滑らかでぱんぱんに張っているのも、ヒアルロン酸が豊富にあるからだ。
ヒアルロン酸は細胞と細胞をつなぐのりのような役割をしている。加齢に伴う顔の小じわやたるみに直接ヒアルロン酸を注射して、若い皮膚を保とうとする人もいる。
また、ヒアルロン酸は関節液の主成分でもあり、関節軟骨を保護し、関節の動きを滑らかにして、軟骨に栄養を与える働きがある。
若い人の関節軟骨はゆで卵の殻をむいたようにつるつるで摩擦がほとんどない。
加齢によって新陳代謝が悪くなると、つるつるがざらざらに変わって滑りが悪くなり、摩擦によって軟骨がけば立ってくる。
特にひざ関節は日常繰り返されるひざへの負荷などで軟骨の変形も始まる。
次第に軟骨の表面に裂け目ができ、それがはがれ始めると炎症が起きて関節液が多く出てくる。余分な関節液は普通吸収されてしまうのだが、炎症が起きているとそのまま関節に残ってしまう。これが俗に言う水がたまるという症状だ。
このとき関節のヒアルロン酸の濃度は薄められて低下し、関節液の粘度も落ちる.そのため関節軟骨の栄養状態が悪くなり、関節の破壊が起こるようになる。
治療の一つに、たまった水を抜いてヒアルロン酸を直接関節内に注入する方法がある。このとき使用する薬剤はまさにニワトリのとさかが原料だ。
変形性ひざ関節症の場合、ひざに直接ステロイド剤を注入することがある。痛みを取るうえでは大きな効果があるが、使い過ぎると骨や軟骨を弱くするという重篤(じゅうとく)な副作用がある。
40歳くらいから変形性ひざ関節症の予備軍となる。このころから減量し運動療法を行えば、薬に頼らないひざを維持できる。それというのも関節液は関節を動かすことで分泌と吸収のバランスが取れるからだ。