『第509話』 【スイカ、、トウモロコシ】利尿作用あり生薬にも活用
スイカとトウモロコシといえば、夏を代表する食べ物だが、どちらも薬として活用されてきた。
スイカはセイガ(西瓜と書く)というのが生薬名だ。アフリカ原産のウリ科の植物で、日本に定着したのは江戸時代だといわれる。
果肉の94%が水分で、その利尿効果は抜群だ。お酒を飲んだあとなら、アルコールが早く抜けるし、なにより暑熱を払ってくれる。
栄養価値はほとんどないが、アミノ酸の一種であるシトルリンやカリウムが尿の出を良くし、果糖の働きと相まって腎(じん)炎やかっけの改善に役立つ。
また汗で失われるカリウムの不足を補うので、体がだるくなりがちなのを抑える。
日射病や熱病で激しく汗をかき、高熱が出てやたらにのどが渇くといった症状に使う白虎湯(びゃっことう)という漢方薬がある。
この処方の主成分で解熱作用を持つ生石こうが白い色をしているのもこの名の由縁だが、白虎は中国では西の方角を守る神獣であり、西は秋に通じ、秋は熱を冷ます働きに通じるという考えがある。
まさにスイカは天然の白虎湯だ。
スイカの果肉を種ごと砕いてなべに入れ、しばらく煮てから途中でガーゼで濾(こ)し、それをさらに煮詰めアメ状にしたものが西瓜糖だ。
食後に一さじいただくのも夏バテ防止の一つになる。
ウリ科の植物は同じような薬効を持つため、キュウリやトウガン、ヘチマの実が各地でよく食べられる。
一方、トウモロコシの実は栄養価が高く、タンパク質、脂肪、でんぷんのほか、ビタミンA、B1、Eを含んでいる。実際生薬となるのは実の頭についている南蛮毛とよばれる毛の部分だ。
この部分に利尿作用のある硝酸カリウムが含まれているので、これを日干しにして用いる。
トウモロコシのでんぷんは錠剤を作るときの増量剤となる。また、はい芽から採れる油は軟こうの基剤や注射剤の溶剤にも利用されている。