『第508話』 【急性腸炎】安易に下痢止め飲まないで
夏場は急性腸炎にかかりやすい。
冷たいものの取りすぎや寝冷えなど腸のバランスを崩しやすい環境も一因だが、何と言っても多いのは細菌性食中毒によるものだ。
加熱処理したものでも翌日に食べて食中毒を起こした例は多い。
よく知られるサルモネラ菌はゴキブリによって運ばれ、食品や皿、調理器具などに付着して繁殖する。台所の衛生状態に気を配り、不潔な手で食品に触らないようにする。
また暑いときに生の魚介類を食べて急性腸炎になるのは腸炎ビブリオが主な原因だ。
ほかにも、卵の殻についているカンピロバクターや井戸水の病原性大腸菌にも要注意。
急性腸炎の主な症状は腹痛と下痢だ。
細菌やウイルスが小腸や大腸の粘膜に付着すると、体はこれらを早く出そうとする。すると水分が吸収されないうちに便が出て下痢便となる。
細菌が増殖して炎症が起きると腸の粘膜は傷ついて水分の吸収ができなくなり、やはり下痢になる。
ダメージを受けた粘膜からは水分が染み出してますます便が緩くなり、下痢が止まらない。
一般に小腸がやられると水様便になり、大腸が浸されると血液や粘液が混じった粘血便になる。
ここで安易に下痢止めの薬を飲むと、細菌が腸内でさらに繁殖して危険だ。繁殖した細菌は毒素を出し、赤血球を破壊したり、脳に炎症を起こしてけいれんを誘発したりする。
まず細菌感染が原因のときはその細菌に効く抗生物質を使う。さらに下痢で失った乳酸菌などの善玉菌を補うため、ビフィズス菌製剤を補給する。
また傷んだ腸粘膜を保護するタンニン酸アルブミンで炎症を鎮める。腹痛には、腸の筋肉の緊張を緩める抗コリン剤という薬を使う。
そして最も忘れてはならないのが水分補給。みそ汁の上澄みや紅茶、スポーツドリンクなどがよい。水分と電解質が十分であれば2、3日食事を取らなくても大丈夫だ。
しかし、十分な水分と栄養を摂取できない状況があれば、迷わず受診してもらいたい。