『第504話』 【塩分摂取量】過ぎたるは及ばざるがごとし

塩をいつも敵に回すようでしのびないが、やはり日本人の塩分摂取量は欧米に比べ3、4倍も多い。

塩が悪者にされるのは塩分の取り過ぎが心臓病、脳卒中をもたらす高血圧の原因になるからだ。

もちろん塩は人間の体には欠くことができない。汗や尿や涙はしょっぱいし、それらは常に失われている。

細胞間で必要な物質をやり取りするにも不可欠だ。しかし過ぎたるは及ばざるがごとし。血液中に食塩の主成分のナトリウムが増えると、血管を作っている平滑筋にもナトリウムが充満し、それが細胞内のカルシウムイオンを増やす。

このカルシウムイオンは平滑筋を収縮する作用がある。つまり血管がぎゅっと細くなって血圧が上がる。

いったん高血圧と診断されると薬の出番だ。主な症状がなくても、放置しておくと突然死や寿命が短くなったりするからだ。

降圧剤は、脈が速い(頻脈)人、むくみのでる人、細い動脈が収縮する人などに合わせて数種類処方される。

いったん薬を飲み始めると一生涯付き合うことになるのではないかと不安を感じる人もいる。

しかし止めたり飲んだりということの方が体には危険だ。一時的に高い血圧に跳ね返ったり、合併症を起きやすくするからだ。

降圧剤もさまざまなライフスタイルに合うよう種類が増えた。1日1回ですむ薬も広く浸透している。

降圧剤によっては、顔がほてったり、めまいや空咳(せき)、まれに歯ぐきがはれたりすることがある。

飲み始めのころや薬の切り替え時には体調や体の変化に特に意識するようにする。

体に合った降圧剤で長期にわたり血圧を低く安定させることができると、減薬も可能だ。

まずは米が主食の日本人にはつらいが、塩分を控える工夫をしよう。

おかずに直接しょうゆをかけて食べていた人は、きょうから別のお皿にしょうゆを取り、それにつけながら食べよう。これだけでもずいぶん塩分摂取を減らせる。