『第499話』 【消毒剤あれこれ2】手指にはアルコール液を

手傷を負った仲間に焼酎(しょうちゅう)を口に含んで噴霧するシーンが時代劇に登場する。その効果のほどは、正確には判断できない。しかし、アルコールが消毒剤として使えるということは教えてくれている。

アルコールの中でも消毒剤として使えるのはエタノールとイソプロパノールだ。エタノールの消毒効果が最大になるのは、細菌では60~95%の濃度のとき。ウイルスを対象とするなら100%近いものの方が効果はあるが、全てのウイルスに効果があるわけではない。

実は100%エタノールでは細菌を消毒することができない。細菌の表面だけが蛋白(たんぱく)変性を起こすからで、結果的にエタノールの細胞内への侵入を阻害し、本来、蛋白性変性を起こしたい細胞内部の各種酵素や遺伝子を変性できなくなってしまっているためだ。

アルコール消毒液は、人に使ったときに安全性が高く、脱脂綿に染み込ませて、さっとふけて、速乾性があり使いやすい。特にブドウ球菌による食中毒を予防するため、手指を消毒するときなどに利用したい。

さまざまなウイルスを殺菌したいのなら塩素系消毒剤がお薦めだ。もちろん細菌にも効果があり、水道水中には0.1ppm以上の残留塩素が含まれている。消毒剤として用いるためには、その1,000倍以上の0.01~0.05%の濃度が必要だ。タンパク質が多い血液や排せつ物の消毒なら1%の濃度で使用する。

塩素系には漂白作用もあり、まな板、ふきん、補助器具の浸け置き、寝具類を洗濯時に消毒するなど利用範囲が広い。塩素と同じハロゲン金属のヨウ素も消毒剤として使われる。その代表にヨードチンキがあるが、傷口に使うと、痛いので使えなくなった。

これに代わってうがい薬で有名なポピドンヨード(ヨードホール)が1956年に開発された。ヨードチンキと同様にヨード過敏症の恐れがあるので広範囲には使えないが、手術時の皮膚や分べん時に外陰部周囲などの消毒をするのに使われている。