『第496話』 【寒冷暴露】 「冷え性」のきっかけに

これから暖かい季節に向かうと、女性の冷え性対策が本格化する。季節感からか肌寒い日でも薄着傾向となり、汗ばむ日には各施設で冷房が稼働する。冷房や冷たい外気に長時間さらされ、いったん体が冷えるとなかなか体温が戻らないことがある。これを「寒冷暴露」と言い、冷え性のきっかけになるともいわれる。

このような経験をした人は、体の中心部を冷やさない工夫が必要だ。冷房の効いているところではジャケットやズボンを着用し、使い捨て力イロを腰や太ももの付け根の内側などに張ると体温を保つことができる。

また、女性の多い職場では禁煙が推奨される。たばこの中のニコチンは末梢(しょう)の血管を収縮するので、吸った本人の体温は急に下がる。しかし、吸い終わると元の体温に戻るという。それに対し、喫煙者の周りにいて副流煙を吸った人では体温が緩やかに下がり、そのまま回復することがないからだ。

冷え性という病名はないが、冷えることにより頭痛、腰痛、肩こり、腹痛、下痢、頻尿などさまざまな症状が引さ起こされ、治療の対象となることがある。冷え性という体質を改善するには、漢方薬を長期にわたって使用することもあるが、冷え性に伴う症状には飲めばすぐ効く漢方薬もある。

冷えからくる下痢には真武湯(しんぶとう)、頭痛には呉茱萸湯(ごしゅゆとう)、膀胱(ぼうこう)炎には五淋散(ごりんさん)などがそれだ。麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)は急に冷えてのどの痛みを伴ってきたときなどに服用すると、すぐに体が温まって痛みも治まる。

しかし、効果の大きい漢方薬はだれにでも当てはまるわけではない。一人ひとりの体質の見極めが漢方選択の難しさでもある。即効性のある漢方薬は、作用の強い成分が入っていることも事実だ。