『第495話』 【高齢者の骨折】 補助具使用し、転倒防ぐ
日中の気温も上がり、足元を気にせずに外出できるようになってきた。とはいえ、高齢者が出掛ける場合には、転倒と骨折に十分に注意する必要がある。骨折してもギプスを付けて動かさないようにしていれば大丈夫というわけにはいかないからだ。
国民生活基礎調査(平成10年)によると、65歳以上の人が介護を必要とするようになった理由の第4位(11.7%)が骨折・転倒だ。▽1位(30.3%)脳血管疾患▽2位(14.9%)高齢による衰弱▽3位(12.2%)痴ほう-となっている。
高齢者の骨折は男性より女性の方が3倍多く、骨密度が低下する骨粗鬆症(こつそしょうしょう)などが影響している。発生度合が高いのは、足の付け根の大腿(だいたい)骨頚(けい)部骨折。加齢に伴い、筋力が低下することが転倒の原因につながる。
骨折治療で寝たきりになると、筋力が著しく低下して起き上がることが困難になる。また、便秘の原因となる内臓系機能の低下へ皮膚下血行障害による床ずれ、尿路感染や肺炎などの感染症も心配だ。さらに、運動不足や生活リズムの乱れで不眠になるなどドミノ式に状況が悪化する。
転倒を誘発しやすい薬を服用している高齢者も注意が必要だ。睡眠薬や精神安定剤などの向精神薬、抗パーキンソン病薬などは鎮静作用で精神・運動の活動が低下する。転倒を経験した70歳以上の7割が長時間型の睡眠薬を服用していたという報告がある。降圧剤による起立性低血圧、糖尿病薬による低血糖など一時的に意識喪失を起こす副作用を持つ薬、鎮痛解熱剤の中には視覚障害、平衡機能障害を起こす薬もある。
筋力低下の度合は、握力計で調べることができる。また、筋力低下を補うために、杖(つえ)などの補助具の使用も考えたい。しかし、薬の場合は主作用と副作用を理解して注意するしかない。こうしたことに気をつけて、春の日差しを楽しみたいものだ。