『第729話』 【ダイエット】行き過ぎ注意し徐々に

「美しくありたい」「やせたい」という願望を抱くことは決して悪いことではない。悪いのは、その思いにとらわれ過ぎてしまうことだ。

世の中には痩身(そうしん)健康食品や痩身法なる民間療法が数多く存在する。健康食品が痩身という効能を掲げれば薬事法違反となる。

今月、あるテレビ番組で3分程度いった白インゲン豆を使ったダイエット法が紹介され、実践した多くの人が嘔吐(おうと)や下痢の症状を訴える健康被害が出た。総務省から健康被害が拡大しないように原因を明らかにし、注意を呼び掛けるように努めることを要請されたと伝えられている。これまで、こうしたテレビ番組で紹介されたダイエット法で健康被害が出た例は聞いたことがない。

現時点では白インゲン豆に含まれるレクチンが加熱が不十分のために残って胃や腸の粘膜の炎症を引き起こし、嘔吐や下痢の症状に至った可能性が高いとされる。レクチンは糖とタンパク質が結合した物質で血液を固める働きを持っている。通常は加熱すると、その働きなどは失われる。

ただし豆科の植物はさまざまな物質を含んでいるので、レクチンだけが原因でない可能性もある。いずれにしろ症状から推察すると、胃および腸管粘膜に結合した有害物質によって、嘔吐や下痢が発生したのだろう。

白インゲン豆がダイエットにいいといわれるのは、米やパンの主成分であるデンプンなどの炭水化物を糖に分解するα-アミラーゼの作用を阻害するファセオリンを含むからだ。しかし嘔吐などの症状を防ぐために加熱すればレクチン同様にファセオリンも効果がなくなるはずで、減量へ。の有効性については科学的裏付けに乏しいと思われる。

過度のダイエットは勧められないが、やせる必要のある人もいる。減量は急激にではなく、3カ月で体重の5~10%落とすのが目安。1日の摂取エネルギー量を1,200キロカロリーに抑え、食事前に繊維質の多い野菜を時間をかけてよくかんで食べる。そうすると満腹感を得やすい。寝る前に食べるのは太る原因になるので我慢する。ストレスを減らし、禁煙する。1日1万歩を心掛け、減量の結果を毎日記録して効果を確認する。ご飯を半分にするだけでも効果がある。

特殊なダイエット法はないと断言できる。管理栄養士に栄養プログラムを組んでもらうのも一策だ。