『第671話』 【ミフェプリストン】危害生じ厚労省が規制

今年は、天変地異そのものを体験したような年だった。多くの台風や地震で被害を受けた方々の心の痛みは、すぐには癒えない。救えるのは「時薬」(時間という名の薬)しかないようだ。

人の命ほど、尊いものはない。しかし、これほどぞんざいに、心無く取り扱われてしまうものもほかにない。子どもを欲しいと願う人がいるかと思えば、生まれた命を虐待の対象とする。そして、芽生えた命を都合によって摘み取ろうとする人さえいる。人命を救ったり健康を取り戻すためにつくられたはずの薬は、これらの行為を助長する可能性を秘めている。

日本語を勉強している外国人と話をしていて、ハッと気付かされたことがある。彼は「麻(大麻)を悪い鬼のように使うから悪魔と言うんだよね」と言う。なるほど!漢字はよくできている。そのような麻薬とも思える薬に、厚生労働省は規制をかけた。

その薬とは1980年、フランスで開発され「RU486」と呼ばれた経口妊娠中絶薬・ミフェプリストンだ。現在、ヨーロッパ、米国、中国で医師が直接処方することで、使用が認可されている。

この経口妊娠中絶薬は、妊娠を継続させるプロゲステロンというホルモンの作用を止めて胎児を死亡させた後、子宮を収縮させるミソプロストルという薬で死亡胎児を分娩(ぶんべん)させる。既に外国ではミフェプリストンによる膣(ちつ)からの大量出血が止まらなくなる事例が報告されていて、慎重な使用が求められていた。米国は11月に、胎児が子宮内に残存して感染症を引き起こし敗血症になる場合があること、子宮外妊娠患者では、卵管破裂を起こすケースがあることを警告している。

日本においても、個人輸入して使用した例で危害が生じている。こうしたことから厚生労働省は、これまでは少量であれば手続きがなくても個人輸入が可能だった取り扱いを改め、原則として医師の処方に基づくことが確認できた場合に限って、輸入が可能となるように制限した。

現在も日本語で説明し、個人輸入を促す中国業者のインターネットのホームページが設置されたままになっていて、情報が流されている。あたかも国内にあるかのように個人輸入代行業者を装う中国の業者に対して、その取り締まりに業を煮やした厚生労働省は、中国政府に対して規制の要請も辞さないとする状況となっている。

思いもしなかったスギヒラタケが原因とみられる病気も発生した今年、自然が与えてくれた命の尊厳について年末年始に家族で議論してみてはいかがだろうか。