『第12話』 不眠の50%以上、持続性短い薬を、

「眠れなくとも死にはしない」などと、不眠症の人を慰めるのは、あまり本人の気持ちを理解しているとはいえない。眠りたいのに眠れないというのは、患者にとっては、死ぬよりつらいのだそうだ。

睡眠薬は大脳皮質や脳の睡眠中枢に作用して、少量では鎮静を、中等量では睡眠を、大量ではこん睡状態をもたらす。

現在ではベンゾジアゼピン系と呼ばれる抗不安薬が主流で、つまり不安を解消して二次的に睡眠を起こそうというものである。

従来使用されていたフェノバルビタールは、増量しなければ効かなくなったり、急にやめるとけいれんや震えといった禁断症状が出ることもあるが、眠りを深く長くするためには必要な薬である。必ず主治医の指示に従って服用する。

不眠症の50%以上は入眠障害型で、いわゆる寝つきの悪いタイプ。環境の変化や感情が高ぶっている時、不安や緊張がある時などによく見られる。

このタイプには、服用後5~30分以内で効果が表れ、しかも持続性の短い薬を使う。いったん眠れば自然な睡眠に移行でき、薬の副作用も少ない。一時的に起こる不眠の場合、1~2晩満足のいく睡眠が得られたら、薬も1~2晩で打ち切る方がよい。

夜中に何度も目が覚めて眠った気がしないという熟眠障害型には、効果が持続する薬を使う。このタイプは、うつ病や老人にもよくみられる。

朝早く目が覚めて、そのまま眠れなくなる早期覚せい型も老人によく見られるが、うつ病や精神分裂症の初期、脳動脈硬化症の人にも特徴的である。

不眠症にはさまざまな原因があり、病気が原因の時は、単純に睡眠薬では解決できない