『第40話』 対等に話し合い、診療の意図知る

最近、医療の場ではインフォームド・コンセント(IC)が論議されている。

説明と同意と訳されるICは、欧米で医事紛争に伴う法律的概念として強調されてきた。日本では権利意識の高まりとともに患者の人権保護の立場で検討が進められ、平成2年に日本医師会生命倫理懇談会はその報告をまとめている。

臓器移植やがん告知でのICは、家族を含めた患者.側の知る権利と自己決定権、医療側の告知義務と治療義務で議論が伯仲する。

患者側には知りたくない権利や治療を拒否する権利もあり、議論はさらに難しくなる。

日常の医療現場では副作用を説明したために薬を服用しなくなり、病気が治らないといった患者に不利益となる可能性もある。

こうしたことを避けるためにも医療側がより平易な言葉で説明し、場合によっては白衣を脱いで対等な人間とし十分に話し合い、お互いの人間性をも知る必要がある。もちろん患者側にも、一定の知識と理解力が求められる。

最近は「処方された薬が分かる本」がいくつも出版され、飲んでいる薬を簡単に知ることができる。しかし、ある種の精神安定剤が食欲増進や血圧を下げる目的で使用されることもある。重要なのは、医師の診療意図を知ることだ。

患者の権利を尊重し、医療側がいかに適切なアドバイスをし、患者の希望する医療環境を整えるのかを再考する時期にきている。患者は知りたいことは遠慮せずに聞き、説明されたことはしっかりと受け止める心構えが必要だ