『第53話』 ほう酸の使用法、間違えば中毒に

「コクゾウムシ(穀象虫)から米を守るため、ほう酸を玄米に混ぜて保存している家庭があるが、害はないか」という質問が寄せられた。

ほう酸は昔からうがいや目、皮膚の洗浄や消毒に用いられ、危険だという認識は一般に薄い。一方では、アリやゴキブリの駆除を目的に、ほう酸だんごとして使われている。

医薬品としてのほう酸は昭和60年の医薬品再評価によって有用性が認められず、目の洗浄消毒に限って2%の濃度で使われるだけとなった。

ほう酸の経口中毒量は成人で1~3グラム、経口致死量は15~20グラムで、小児の場合はこの3分の1程度だ。健康な皮膚からは吸収されないが、やけどや湿しんなどの傷口や胃腸からは吸収されやすい。

急性中毒の多くは消化器系の症状で、おう吐、下痢、腹痛が現れる。また、発しんや脱力感、時にはけいれんが起こることもある。

大量摂取時に心配されるのが、細胞に対する毒性である。吸収されたほう酸は腎(じん)臓を通過して尿中に排せつされる。このとき腎臓の細胞を壊死させ、腎不全を起こす。

小児がほう酸だんご等を誤食した場合は、吐物が気管内に入らないように吐かせる。吐かない場合でも無理をさせずに、必ず医療機関に行ってほしい。

ほう酸は白色の粉末なので胃薬や調味料と間違える事故が報告されている。

玄米に混ぜるといった使い方は、思わぬ事故や急性、慢性中毒を引き起こすので絶対にしてはならない