『第59話』 夏に弱い医薬品、熱変化に要注意

梅雨前半は夏本番のような暑さが続いたが、医薬品にも暑さに弱いものがある。

座薬や軟こうは加熱され、溶けることで製剤的な変化を起こす。

座薬はカカオ脂、マクロゴールといった基剤を加熱し、薬効成分と均等に混ぜて作られる。

昔は金属製の型に60度前後でクリーム状に溶かしたものを流し込んで作っていたが、今は座薬の形をしたプラスチック製容器が用いられ、成型容器がそのまま包装容器となっている。基剤の性質によって差はあるが、主に体温や分泌 液によって溶け、薬効を発揮する。

体内だけで溶ければ問題はないが、夏の日差しを浴びた車の中などでは60度を超える温度になることもある。当然、座薬も溶け、家に戻って冷蔵庫に入れて保存すれば、また固まることになる。このとき基剤と薬効成分が比重などの違いで分離してしまい、薬効成分の濃度に偏りができる。

とん服剤として小児に用いる時、座薬を二分して用いることがあり、こうした場合では効果がでなかったり、副作用が強くでる可能性がある。

軟こうでも同様に、ワセリン、脂肪油、ラノリンといった基剤と副腎(じん)皮質系の薬剤が分離し、チューブの中で薬効成分濃度が偏るという報告がある。

座薬や軟こうが処方されたら、早めに持ち帰り、湿気を避けて冷暗所に保存する。また、これらの医薬品を持ち歩く場合も同様の注意が必要だ