『第60話』 唯一の薬博物館、資料は32000点

夏休みに東海地方へ旅行する予定の人は、岐阜県にある日本で唯一の薬の博物館を訪ねてみたらいかがだろうか。

名鉄新岐阜駅からバスで35分、さらに歩くこと20分。エーザイ川島公園工場の中にある、内藤記念くすり博物館がそれだ。昭和46年に開設され、博物館前には各種の薬草、ハーブが植えられた薬草園と温室があり、入観は無料。

32,000点の整理済み資料の中には、杉田玄白らが訳した解体新書四巻附図一巻も展示されている。附図は秋田藩角館出身の小田野直武が、クルムス解剖書など五種の解剖図から写し取ったものだ。

華岡青洲の麻酔剤痛仙散を用いた乳がん手術図は、実際に用いた手術道具とともに並べられ、当時の医療技術を知る重要な資料となっている。

館内には所狭しと明治初期の薬を宣伝した木製看板が掲げてあり、今でもテレビコマーシャルでなじみの薬の名前も見かけられる。

江戸時代の薬屋を再現したコーナーは圧巻で、薬を入れる小さい引き出しがたくさんついた百味たんすが並び、近代的な薬局にはない疫病神が逃げていきそうな重々しい雰囲気がある。

図書館には医学、薬学を中心とした24,000冊の蔵書があり、現代漢方薬の出典となった「金匱要略(きんきようりゃく)」「傷寒論」や薬用となる植物を著した「神農本草経」「本草綱目」などを閲覧することができる。

また、薬が作られる工程に興味のある方は、予約をすると、工場も見学することができる