『第61話』 ドーピング剤はスポーツの麻薬
勝つためには手段を選ばず。勝つことを目的として用いられる薬剤、それがドーピング剤だ。
オリンピック委員会の定義では、競技能力を高めるために人体にとって異常であるすべてのもの、または生理的なものであっても、異常な量または異常な方法で人為的に不正に用いるものとされている。
たけなわのバルセロナオリンピックでは106品目が指定され、これらはすべて尿検査によってチェックされる。
ドーピング薬物には大別すると6種類ある。
瞬発力を高めるためのアンフェタミン、エフェドリンといった興奮剤。カフェインも一定量が検出されるとドーピングとみなされる。
コデイン、ヘロインなどの麻薬は練習の苦痛や精神的疲労を取り除く。
筋肉増強剤で注目を浴びたスタノゾロール(アナボリック・ステロイド)は強じんな肉体を作り出す。
不整脈、抗高血圧薬として用いられるβ遮断剤はどうきや手の震えを止める効果があり、緊張して上がるのを防ぐ。
利尿剤は減量や尿中の薬物を薄めるために用いられる。
最近では、逆にこうした薬物を尿中に排出させにくくするプロベネシド(痛風治療剤)を使う例もある。
特に問題となっているのが、筋肉に大量の酸素を送り持久力を付けるため、いったん体外に取り出した血液を試合前に戻す血液ドーピングだ。検査方法が確立しにくく、練習方法によっては故意に赤血球数を増やすことができるからだ。
さらに、造血ホルモンのエリスロポイエチンや成長ホルモンまで登場し、とどまる所を知らない。n まさにドーピング剤はスポーツ界の麻薬であり、アメリカではドープという言葉が麻薬(ドラッグ)のスラングとして用いられている