『第63話』 胃潰瘍患者には心身の安静必要

胃は体の中でもストレスを1番受けやすい器官だ。 

ふだん胃は、その粘膜細胞からヌルヌルした粘液を出して、強酸である胃液によってみずからが消化されないよう守っている。 

ストレスがたまると、胃壁の血管が収縮して血液の流れが悪くなり、胃粘膜の抵抗力も落ちてくる。 

さらにストレスによる自律神経の興奮が胃酸の分泌を高める。こうなると、胃酸の攻撃は胃の防御能力を上回って、ついには胃液が自分の胃を消化し始める。 

以前アメリカで、胃潰瘍(かいよう)のマウスにいろいろな野菜のエキスを与える実験をしたら、キャベツのエキスだけが有効だったという話はよく知られている。 

その有効成分にはU成分(キャベジン)とG成分(グルミン)の2つがあって、その名前を付けた薬も販売されてきた。これらの作用は、胃酸に消化された胃粘膜の再生を促したり、その保護が主な目的である。 

多方面にわたる坑潰瘍作用をもつ塩酸セトラキサート製剤は、以前は医療用だったが、現在は市販薬として薬局でも売られている。 

胃酸の分泌はアレルギーの時に分泌されるヒスタミンという物質によっても起こる。このヒスタミンが胃壁の細胞にある特定の受容体に結合するのを遮断して、胃酸を抑えようという薬がある。これにより手術を必要とした難治性の胃潰瘍も治せるようになった。 

胃潰瘍は心身の安静が最も大事なため、精神安定剤も併用される。