『第65話』 細胞や血液にもカルシウム必要

年を取れば背中が丸くなったり、腰が曲がるのは当たり前、というのは過去の考え方となった。単純な骨の老化ではなく骨の中身が極端に減って.すき間ができる骨粗しょう症という病気が原因と今では考えられている。 

人間の首の骨や太ももの骨は体の中でも最も強く、相撲の小錦が乗っても折れないほど丈夫だ。ところが骨の中のカルシウム量が半分ほどに減ると、日常のささいなつまずきでも簡単に折れるようになる。 

大人になると骨はまったく変化しないように見えるが、骨も新陳代謝を繰り返し、内部は常に作り替えられている。古い骨組織が壊れると、カルシウムが骨から溶け出して細胞液や血液中に入る。新しい骨組織が形成される時、逆に細胞や血液中のカルシウムを吸収する。 

骨から出ていくカルシウムの量と入ってくる量が同じであれば、骨の強度が維持される。しかし、食事から摂取したカルシウムは、大部分が吸収されずに排せつされる。もし体外へ出る量よりも摂取量が少なければ、細胞や血液中のカルシウム量が減る。 

細胞や血液中のカルシウムはごく微量だが、これがなければ出血した血を固まらせたり、筋肉の収縮やホルモン分泌などのコントロールができないため、骨からカルシウムが溶け出してこの不足分を補おうとする。 

この状態が長く続くと骨形成のカルシウムを取り込むどころか、骨からカルシウムが抜け出ていくばかりとなる。骨粗しょう症の始まりだ。