『第68話』 ストレス予防に休養や気分転換

智に働けば角が立つ。情に棹(さお)させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角にこの世は住みにくい-夏目漱石「草枕」冒頭の一節だが、人間関係なくしては生きていけないものの、精神的ストレスが疲労を感じさせる大きな原因であることも事実だ。

精神的ストレスを受けた時も、一定の状態を維持しようとするホメオスターシスが働く。ストレスが加わると自律神経が過剰興奮し、アドレナリンと副腎(じん)皮質ホルモンが多量に分泌される。それ自体は身体を防御するための反応であって、問題はない。

しかし、ホルモンが正常に分泌できなくなったり、相互のバランスが崩れると、ストレス病といわれる胃潰瘍(かいよう)、高血圧、円形脱毛症、不眠、インポテンツ、過食症といった症状が表れてくる。

これらを防ぐためには、三つの方法がある。第一にまず休養することだ。規則正しい生活と十分な睡眠を心掛ける。第二は心身をくつろがせることだ。呼吸の調整、筋肉の弛緩(しかん)、めい想を組み合わせたヨーガや座禅もいい。腹式呼吸法は目を閉じ大きく息を吸い、身体の力を抜きながら息を吐く方法でいつでもどこでもできる。これにめい想を加えたリラックス法も提唱されている。

第三に気分転換だ。森林浴や犬の散歩もよい。とにかく違う世界に身を置くことだ。このほか、ラベンダーの香りをかぐ方法や音楽を聴くといった感覚健康法がある。

現代ではむしろ、軽いストレス病を持っている方が普通がもしれない。ストレスを良い意味での刺激と考えることも必要だ。しかし、症状があれば早めに専門の精神神経科を受診することを勧める