『第69話』 薬の確実な服用、適正医療の基礎

血圧が高くて医師に診てもらっているが、なかなか下がらないという電話をいただいた。

聞いてみると、ほかにも心臓や肝臓の薬、睡眠薬、消化剤など7種の薬を服用しているため副作用が心配で、血圧降下剤は1日3回服用の指示があるのに朝1回しか服用していないという。そのほかの薬も自己判断で服用回数を減らしていた。

渡された薬をどれだけ服用しているかの割合を、専門用語でコンプライアンス(服用率)という。この人のように、服用せずに残った薬が箱に入り切れないほどたまっている方も多いのではなかろうか。

高齢になると服用している薬剤数も多く、薬物相互作用や副作用が心配になるのも無理もない。しかし、服用しなければ症状が改善しないのも確かだ。

問題点の第一は、副作用等の説明がされても正しく理解されていなかったことだ。インフォームドコンセント(説明と同意)が医療の常識になってきている今日、不明な点があれば積極的に医師や薬剤師に説明を求めてもらいたい。

第二は、服用した結果が医師に伝えられていないことだ。服用していないことが医師に知らされず、症状が改善されなければさらに薬の量が増えるか、より効く薬に切り替えられることになる。このまま元の服用回数に戻せば、当然、副作用等の発現率は高くなり非常に危険だ。

また、服用結果を正確に伝えることは治療効果の判断だけではなく、副作用の発現を早期に発見することにも役立つ。

コンプライアンスの向上は適正な医療の基礎であり、非常に大切な問題を多く含んでいる