『第70話』 トルエン中毒で毎年約25人死亡

秋田市内で先週、シンナー乱用者にトルエンを販売した容疑で病院関係者が逮捕された。10月から2カ月間は麻薬、覚せい剤、向精神薬、シンナーなどの乱用防止のための全国運動が展開されている。

シンナーとはトルエン、酢酸エチル、メタノール、アセトンといった有機溶剤の混合物のことをいう。毒物及び劇物取締法は、これらの吸入、吸入目的の所持、吸入することを知っていながらの販売を禁止している。

トルエンの急性中毒では麻酔作用によって意識障害を起こし、昏睡(こんすい)状態となって毎年25人前後が死亡している。習慣的に吸入することによって起こる慢性中毒は、末しょう神経炎や視野が狭くなったり視力が低下するといった視覚障害を引き起こす。中でも怖いのが大脳や小脳へのダメージだ。脳波に異常が現れ、生涯にわたって脳障害が残ることもある。

トルエンは体内で代謝され、馬尿酸となって尿中に排せつされるため、尿を分析することによって吸入したかどうかを知ることができる。警察白書によると、覚せい剤乱用者の35%がシンナーを乱用した経験があり、麻薬、覚せい剤乱用の入り口となっている。

薬物、シンナーの乱用は本人に大きな障害を残すだけでなく、さまざまな形で犯罪を誘発するとして社会不安の原因にもなっている。

乱用防止に向けていろいろな取り組みが行われているだけに、今回の事件は残念だ